大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

興福寺阿修羅像5<動態的な見方>

阿修羅像3

 阿修羅像をみていると、これを静態的な姿ととらえるか、動態的な姿ととらえるかによって印象がかわってくると思う。
 三面六臂の一種異様な姿は、しかし、踊っているような、身体が見事に回転しているような姿を表現したと想像すると不思議と違和感がなくなってくる。
 中国・敦煌にのこされた阿修羅の天井壁画(530年代と伝えられる)は4眼で4本の腕をもっているが、絵には激しい動きがある。まわりに配置されたほかの飛天なども風をうけて天空を駆けているような姿であり実に動態的である。インドの大ヒット映画マハラジャのあの激しい動き、タイなど東アジア諸国のしなやかな曲線的な踊りを思わず連想する。
 してみると、「三面」は360度全てを見渡している動態を示し、「六臂」は千手観音や東大寺不空羂索観音のようにあまねく衆生を救いたもう常に動いている御手と考え、それを一体に表現しているという解釈だって成り立つのではないか。
 たとえばだが、ストロボスコープ、Stop-Motion技法や日本的に翻案すれば忍者の変幻の術・分身の術などもアナロジーとして考えてみる。今回、真後ろからそのお姿をはじめて拝観しても、まったく破綻がない造型力は、作者の並々ならぬ彫刻的技倆を示していることは間違いない。
 よって、武闘神たる阿修羅の活発さを象徴する三面、六臂といった「動態」性とそれに対して、静かな憂いを含んだようなご尊顔の表情と中空にふわりと浮くような下半身の「静態」性のおりなすアンバランスこそこの像の解析を難しくする魅力の根源であり、視覚に強烈なアンビバレンツ(分裂的)な印象を植え付けるのではないかと思った。

FC2Ad