大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

木村小舟 『推古より天平へ』 1928年(東京 : 芸艸堂刊)

 表記の本を読む。この人は大変な博学であった。続編として『天平より藤原へ』等があり、また、晩年には『新修日本仏像図説』 (1952)を上梓。終生、仏像や歴史に強い関心を寄せていたことがわかる。しかも、専門は児童文学者であり、のみならず博物学にも食指を動かしている。
 通読して参考になるのは、各仏像について、当時の各般の見方(学界にとどまらない)を丹念に拾って、そこから「通観」する視点を目指そうとしていることである。また、時に大胆な自身の推論も披露している。例えば、薬師寺聖観音像についての見解はユニークで、法隆寺金堂壁画との関係を積極的に論じ、ほぼ同時期の作とみる。これに限らず、総じて、仏像と絵画の関係に注目しており、その点も考えさせられる。児童文学者だったから文章は平明かと言えば、これはそうでない。いわゆる文語調で、いま読むのはすこし厄介だが、論点の提示はクリアだ。
 さて、写真の夢殿救世観音についてである。ここではまず、和辻哲朗『古寺巡礼』を引用しながら、内務省国宝帖の分析などに加えて、笹川臨風の言葉『端厳無比、敬虔措く能わざる絶品』を紹介、讃辞をおくっている。
 また、飛鳥仏の特色について、司馬一族、止利仏師のみならず、先だって、豊浦堂に3体を彫像した歴史上、消えた仏師、池邊直氷田(いけべあたいひだ)または溝部直氷田(みぞべあたいひだ)の存在にも注目している。自由な発想とともに、こうした「派生系」をも見落とさないところが本書の奥の深さであろう。


(参考)
木村小舟 きむら-しょうしゅう 1881‐1954年
明治-昭和時代の編集者,児童文学者。
明治14年9月12日生まれ。名和昆虫研究所にはいる。巌谷小波(いわや-さざなみ)にみいだされ,博文館で「少年世界」などを編集。科学,歴史,美術など各種の児童読み物を執筆し,「小波お伽(とぎ)全集」の編集につくした。昭和29年4月20日死去。72歳。岐阜県出身。本名は定次郎。著作に「少年文学史・明治編」など。
http://kotobank.jp/word/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E5%B0%8F%E8%88%9F

(主要著書:Amazonで検索)
日曜之生物学―野外研究 木村 小舟 (1927)
日本国史物語〈第3〉 木村 小舟 (1930)
ベニスの天使―世界美談 (話の泉〈第1編〉) 木村 小舟 (1946/6)
新昆虫記 木村 小舟 (1949)
明治少年文化史話 木村 小舟 (1949)
少年文学史〈明治篇 上巻〉 木村 小舟 (1949)
少年文学史〈明治篇 下巻〉 木村 小舟 (1949)
仏像仏画物語 木村 小舟 (1941)
新修日本仏像図説 木村 小舟 (1952)

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/tb.php/168-fce0f2e8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad