大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

空海と密教美術展に行く 仏像の魅力

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 台風6号一過。つかの間ながら猛暑も一服感のある今日、東京国立博物館に足を運ぶ。事前に相当、あたりをつけていたので、注目される仏さまを集中的に観る。三筆空海の書を観る方も多いのではと覚悟はしていたが、会場は意外に空いていて待ち時間はなかったし、ゆっくりと拝観することができた。

 この展覧会の基本的なコンセプトは、「密教と曼荼羅世界」への接近ではないだろうか。延暦13年(794)、旧態然たる僧侶や貴族の跋扈する旧都・奈良を去って、新都・平安京に遷都がなされる。そして新ウエーブたる「密教」と呼ばれる新知識が、最澄、空海によって大陸からもたらされる。以降、仏教美術は密教美術へと急速に傾斜し、その潮流は仏教に留まらず、日本文化そのものへ強い影響を及ぼしていく。

 まずは、ハイライトたる教王護国寺(東寺)(空海の創始した真言密教の根本道場)から両界曼荼羅図(展示期間によって異なる。胎蔵界<~7/31>、 金剛界<8/2~8/15>)と講堂立体曼荼羅が最大の目玉だろう。

 東寺講堂立体曼荼羅では、もっとも人気の高い国宝 「帝釈天騎象像」、国宝 「梵天坐像」の2像が両翼の奥におかれ、国宝 「増長天立像(四天王のうち)」、国宝 「持国天立像(四天王のうち)」が前面隅に配置され、中に、国宝 「降三世明王立像(五大明王のうち)」、国宝 「大威徳明王騎牛像(五大明王のうち)」、国宝 「金剛法菩薩坐像(五菩薩のうち)」、国宝 「金剛業菩薩坐像(五菩薩のうち)が鎮座する構図である。
 東寺はこのほかにも秀作を持ってきている。国宝「兜跋毘沙門天立像」は彫刻展示で早いほうに置かれているが、彫刻としての完成度、抜群のプロポーションと構成力を誇る基準作で唐時代・8世紀の招来仏とみなされているもの。ほかにも興味深い作品も多い(※1)。

 神護寺(最澄・空海ゆかりの平安仏教の中心地)からは、五大虚空蔵菩薩像のうち蓮華虚空蔵菩薩坐像、業用虚空蔵菩薩坐像の2体が出展されている。これも隠れた見所であり、ご尊顔はなんとも静謐で思惟的である(※2)。

 平安時代の秀作はこれに限らない。大阪・獅子窟寺の国宝「薬師如来坐像」の特徴的な切れ長の目元とコンパクトながら抜群のバランス感ある上体、衣文の美しい処理、印相の優しい表現などは素晴らしい出来。空海所縁の香川・聖通寺の重文「千手観音菩薩立像」も堂々たる体躯で迫る。京都・醍醐寺からも重量級の出展があるが、有名な如意輪観音菩薩坐像は小ぶりながら艶麗であって高貴さも漂う(※3)。

 最後に、板彫、仏龕、像龕の微細加工技術に驚く名品も必見だろう。ほかにも、和歌山・金剛峯寺「大日如来坐像」、御室仁和寺「阿弥陀如来三尊像」などもあって、平安時代の和様化の模索も観察できる(※4)。

 なお、彫刻以外の主要な名品ついては以下を参照。コメントはしないが、書はもちろんのこと、絵画、仏具、工芸品などでも一級品が目白押しである。

http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-235.html
http://kukai2011.jp/construction.html

http://blog.livedoor.jp/shokkou/archives/1947690.html
 
【詳細情報】

※1:京都・東寺
国宝「金剛法菩薩坐像」(五菩薩のうち)1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「金剛業菩薩坐像」(五菩薩のうち)1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「降三世明王立像」(五大明王のうち)1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「大威徳明王騎牛像」(五大明王のうち)1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「梵天坐像」1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「帝釈天騎象像」1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「持国天立像(四天王のうち)」1躯 平安時代・承和6年(839) 
国宝「増長天立像(四天王のうち)」1躯 平安時代・承和6年(839) 

国宝「兜跋毘沙門天立像」1躯 唐時代・8世紀 
重文「法界虚空蔵菩薩坐像」(五大虚空蔵菩薩のうち)1躯 唐時代・9世紀 観智院
重文「蓮華虚空蔵菩薩坐像」(五大虚空蔵菩薩のうち)1躯 唐時代・9世紀 観智院
国宝「天蓋」西院所用 1枚 平安時代・9世紀 
重文「大壇」西院安置 1基 平安時代・9世紀 
国宝「女神坐像」(八幡三神のうち) 1躯 平安時代・9世紀
重文「聖僧坐像」1躯 平安時代・9世紀

※2:京都・神護寺
国宝「蓮華虚空蔵菩薩坐像」(五大虚空蔵菩薩のうち)1躯 平安時代・9世紀 
国宝「業用虚空蔵菩薩坐像」(五大虚空蔵菩薩のうち)1躯 平安時代・9世紀 

※3:平安彫刻の名品
国宝「薬師如来坐像」1躯 平安時代・9世紀 大阪・獅子窟寺
重文「千手観音菩薩立像」1躯 平安時代・10世紀  香川・聖通寺
重文「五大明王像」5躯 平安時代・10世紀 京都・醍醐寺
国宝「薬師如来および両脇侍像3躯」平安時代・延喜13年(913) 京都・醍醐寺
重文「如意輪観音菩薩坐像」1躯 平安時代・9世紀 京都・醍醐寺

※4:その他の注目仏等
重文「板彫両界曼荼羅」2面 唐時代・8世紀 和歌山・金剛峯寺
国宝「諸尊仏龕」空海請来 1基 唐時代・8世紀 和歌山・金剛峯寺
重文「釈迦如来および諸尊像龕」1基 唐時代・8世紀 和歌山・普門院
重文「大日如来坐像」1躯 平安時代・9世紀 和歌山・金剛峯寺
国宝「阿弥陀如来および両脇侍像」3躯 平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺
重文「増長天立像」(二天王のうち)1躯 平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺

http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1405
(参考データ)
ネット上で公開されている写真集を掲載してみました。


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テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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