大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

空海と密教美術展 空海について考える4 憤怒(忿怒)相の意味

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国宝「大威徳明王騎牛像」(五大明王のうち)1躯 平安時代・承和6年(839) 

 憤怒(忿怒)相の意味。少し書いておきたい。寝る前に見るいくつかの古い図版がある。気に入っているのは、たとえば『京都の仏像』(塚本善隆、中野玄三 1968年 淡交社)。中野玄三氏の各像の分析、記述には大局観があり座右の一冊である。
 その中野玄三氏による「日本における密教諸尊の受容」(『弘法大師と密教美術 入定1150年 図録』京都・東京国立博物館 真言集各派総本山会 1973年 朝日新聞社)という論考が参考になる。

(1)天平時代の雑蜜像、(2)大師請来密教像の特色、(3)鳥獣座の受容、(4)明王像の出現、(5)密教諸尊の功徳という項立てだが、おおむねこれを見ればその内容が理解できるだろう。

 端的に言えば(5)で憤怒(忿怒)相の意味は「天皇に対してなす祟りを、新しい密教像のもつ神秘不可思議な霊力をもって鎮圧しようとしたところにある」(p.24)とされるが明快な見解である。

 下記に、東寺講堂立体曼荼羅について、東博のやさしい図版を貼り付けてみた。本配置とこの見解をあわせて考えると、空海は、絶対のパワーをもつ大日如来と金剛波羅蜜菩薩と不動明王の関係を、一般の儀軌的な序列で、

 大日如来>金剛波羅蜜菩薩>不動明王 

と階序的に位置づけるのではなく、むしろ各像は<変化仏>のパターンを表しており場合によれば、

 不動明王⇔大日如来⇔金剛波羅蜜菩薩
 
にいつでも転じることができるという趣旨かも知れないと考える。そう、ウルトラマンの「変身」に似たりである。

 明王とは如何。衆生は大日如来の正法をもってしても済度しがたいこともある。まして悪意をもって祟りをなさんとする場合はなおさらである。そこで、これらに対して大日如来は明王(教令輪身)となり威をもって仏法に導く。この場合、明王は如来の使者または如来の変身といわれる。
 明王は如来がときに「変身」したもの、すなわち変化仏であるということを、この立体曼荼羅はその卓抜な配置をもって衆生にわかりやすく示しているのではないかと思う次第である。


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(参考データ)

『弘法大師と密教美術 入定1150年 図録』京都・東京国立博物館 真言集各派総本山会 1973年 朝日新聞社


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本図版の総論部分の内容は、執筆陣をふくめ、とても充実している。

A 佐和隆研(京都大学名誉教授)「弘法大師と密教美術」
B 中田勇次郎(京都芸術大学名誉教授)「大師の書」
C 山本智教(高野山霊宝館長)「密教美術の源流」
D 濱田隆(奈良国立博物館長)「両界曼荼羅の相承」
E 中野玄三(京都国立博物館美術室長)「日本における密教諸尊の受容」



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テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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