大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

空海と密教美術展 空海について考える9 空海の思想  仏さまの履歴

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国宝「不動明王」東寺(今回の出展外)

 密教において5という数字はさまざまにでてくる。まず、次のような「五智」という根本概念がある。このうちもっとも重要、上位なのは法界体性智であり、最高神、大日如来に具現化されるという。

1.法界体性智(宇宙の真理を現す知慧/真理解明の智慧)
2.大円鏡智(森羅万象を鏡す知慧/鏡の如く映す智慧)
3.平等智(あらゆる機会平等の知慧)
4.妙観察智(正しい観察智慧)
5.成所作智(成就を目指す智慧)

 この五智をうけて、以下のように、五大如来(金剛界、胎蔵界の2分野がある)―五大菩薩―五大明王の4系列のヒエラルヒーが示される。なお、仏さまはすべて、中央(中尊)と東南西北の4方は配される。よって、この関係だけで最大4×5=20の仏さまが居並ぶことになるのである。

<空海、真言密教が構想した仏像ヒエラルヒー>
     
【如来部(金剛界)】自性輪身

    名称 :印相 :彩色
中 尊|大日如来:智拳印:白色  
東 尊|阿閦如来:触地印:青色
南 尊|宝生如来:与願印:黄色
西 尊|無量寿如来:常印:赤色
北 尊|不空成就如来:施無畏印:黒色

【如来部(胎蔵界)】自性輪身

中 尊|大日如来  
東 尊|宝幢如来
南 尊|開敷華王如来
西 尊|無量寿如来
北 尊|天鼓雷音如来

【菩 薩 部】正法輪身
  
中 尊|金剛波羅蜜菩薩  
東 尊|金剛薩凱菩薩
南 尊|金剛宝菩薩
西 尊|金剛法菩薩
北 尊|金剛業(利)菩薩

⇒東寺の場合の五大菩薩坐像:木造漆箔:金剛波羅蜜多96,4cm 金剛宝93,4cm 金剛法95,8cm、金剛業94,6cm、中尊・金剛波羅蜜多を除く:平安時代

【明 王 部】教令輪身 
 
中 尊|不動明王   
東 尊|降三世明王
南 尊|軍荼利明王
西 尊|大威徳明王
北 尊|金剛夜叉明王(天台宗では鳥枢渋摩明王)  

⇒東寺の場合の五大明王像(五尊):木造彩色(乾漆補):不動173,3cm 降三世173,6cm 軍荼利201,5cm 大威徳143,6cm 金剛夜叉171,8cm:平安時代
  
  

 さて、たとえば如来については、大日如来以外では、次の5大スターが一般に親しまれ有名である。     
    
◆釈迦如来(唯一実在した如来、仏陀)  
◆薬師如来(浄瑠璃浄土、「お薬師さま」で庶民信仰でも人気、時に薬壷を持つ) 
◆阿弥陀如来(極楽浄土、「阿弥陀さま」、極楽浄土への最良のナビゲーター) 
◆弥勒如来(現在兜率天、56億7千万年後に如来となる) 
◆毘盧遮那仏(華厳経による三千世界を統括する。東大寺大仏が著名)
ー・-・-・-・-・-・-・-
◆大日如来(両界曼荼羅の主尊、菩薩形、毘盧舎那仏と同体、密教統括仏)

http://www10.ocn.ne.jp/~mk123456/hasei.htmを参照

 それに比べれば、上記の大日如来を除き、金剛界で比較的作例のある阿閦如来、宝生如来のほかは、無量寿如来、不空成就如来に加えて、胎蔵界での宝幢如来、開敷華王如来、無量寿如来、天鼓雷音如来(なかなかユニークな名前である!蓮華王院の風神、雷神を連想させるが)はほとんど普及するに至らなかった。
 菩薩部も同様。そもそもいまでは、教義の違いも判然としないものもある。明王部では不動明王がスターダムに駆けあがって、大いに気を吐くことになるが、それ以外はその威圧的、厳しいお姿ゆえか地味な存在である。

 空海が構想した立体曼荼羅の世界、結果的に東寺ほど残っている寺はない。また、残念ながら個性豊かな如来、菩薩、明王群も不動明王以外は普及はしなかった。また、それは日本のみならず、中国においても同様だった。 
   

(参考データ)四方仏と十王 

 東西南北に仏さまを当てはめると、東方は薬師如来、西方は阿弥陀如来、南方は釈迦如来、北方は弥勒如来という「布陣」になる。また、これは、東方(日の出、生まれ)、南方(日中、現在)、西方(日没、死・寂滅)という人生の「守護」も意味する。いまを生きるには釈迦如来が重要、遠い将来(56億7千万年後)に出現するのは北方の弥勒如来となる。これが「四方仏」である。
 では、大日如来は? 密教では、上記のとおり中央(センター)に位置する。いま風に言えば、COE(センター・オブ・エクセレンス)の地位にあり!とでも・・・。

 ところで十王という役回りもある。ここで注目されるのは、不動明王が堂々とトップバッターで入っていることである。

  十王   読み     本地     審理
1.秦広王 しんこう 不動明王 初七日(7日目・6日後)
2.初江王 しょこう釈迦如来 二七日(14日目・13日後)
3.宋帝王 そうてい文殊菩薩 三七日(21日目・20日後)
4.五官王 ごかん 普賢菩薩 四七日(28日目・27日後)
5.閻魔王 えんま 地蔵菩薩 五七日(35日目・34日後)
6.変成王 へんじょう弥勒菩薩 六七日(42日目・41日後)
7.泰山王 たいざん薬師如来 七七日(49日目・48日後)
8.平等王 びょうどう観音菩薩 百か日(100日目・99日後)
9.都市王 とし  勢至菩薩 一周忌(2年目・1年後)
10.五道転輪王ごどうてんりん 阿弥陀如来 三回忌(3年目・2年後)


【以下は引用】
十王(じゅうおう)とは、道教や仏教で、地獄において亡者の審判を行う10尊の、いわゆる裁判官的な尊格である。数種の『十王経』類や、恵心僧都源信の『往生要集』に、その詳細が記されている。

人間を初めとするすべての衆生は、よほどの善人やよほどの悪人でない限り、没後に中陰と呼ばれる存在となり、初七日 - 七七日(四十九日)及び百か日、一周忌、三回忌には、順次十王の裁きを受けることとなる、という信仰である。

生前に十王を祀れば、死して後の罪を軽減してもらえるという信仰もあり、それを「預修」と呼んでいた。十王は死者の罪の多寡に鑑み、地獄へ送ったり、六道への輪廻を司るなどの職掌を持つため、畏怖の対象となった。

なお、俗に、主に閻魔に対する信仰ととられる場合もある。これは、閻魔以外の諸王の知名度が低いせいであると考えられている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E7%8E%8B

(参考文献)
佐伯 快勝 『仏像を読む』 (銀河ブックス) [単行本]1984/1

内容(「BOOK」データベースより)
「四方仏」を手がかりに仏像の世界をわかりやすく説いた、画期的な入門書が登場。日本仏教の原点である奈良の仏像を例にとり、豊富な写真と平易な図解を用い、立体的に仏像の本質を読み解いていく。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
佐伯 快勝
1932年、奈良に生まれる。55年、奈良教育大学卒業。公立中学校教師を六年間務めた後、浄瑠璃寺に入る。68年、父・快龍師の跡をうけて同寺住職となる。現在、真言律宗総本山・西大寺宗務長と浄瑠璃寺住職を兼務する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
http://www.amazon.co.jp/%E4%BB%8F%E5%83%8F%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80-%E5%AD%A6%E7%A0%94M%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%BD%90%E4%BC%AF-%E5%BF%AB%E5%8B%9D/dp/4059020583/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1315149562&sr=1-1

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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