大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

近江路の神と仏1  三井記念美術館 快慶 石山寺多宝塔本尊大日如来坐像

近江路の神と仏 5

  10月6日、三井記念美術館に行く。まずは今回の美術展についての概要から。近江といえば仏像彫刻の宝庫、本展は東京での秋のメイン・イベントであり、事前のPRからもとても期待をして足を運んだ。観客の入りは思いのほか少なくゆったりと時間をかけて観ることができた。

【以下は引用】
特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展

開催日: 2012年9月8日(土)~11月25日(日)

三井記念美術館にて、琵琶湖をめぐる近江の古社寺に伝えられた秘仏、名宝を一堂に展示する「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」が開催されます。

近江は早くから文化が開け、豊かな風土と歴史を背景にして、非常に多くの文化財を創造し今日まで遺しています。
本展覧会は、これらの中から仏教、神道に関わる優れた美術品と貴重な歴史資料を展示。その美しさを鑑賞し、宗教的な意味と内容を理解し、近江に伝えられた文化の奥の深さに触れることができます。
http://www.nihonbashi-tokyo.jp/event/20120908.html

 今回の主役のひとつが快慶の石山寺多宝塔本尊大日如来像である。快慶初期の作で、いわずと知れた運慶初期の円成寺の大日如来との比較は誰しもが関心のあるところであろう。

【以下は石山寺HPからの引用】

多宝塔本尊大日如来像の拝観について

多宝塔のご本尊、快慶作大日如来像(重要文化財)につきましては、下記の展覧会にお出ましされることとなりました。 そのため、大日如来さまの石山寺での公開は、年内は未定です。何卒ご了承下さい。

■奈良国立博物館

特別展「頼朝と重源-東大寺再興を支えた鎌倉と奈良の絆-」
会期:平成24年7月21日(土)~平成24年9月17日(月・祝)
   ※大日如来さまの公開は7月21日から8月5日まで(約2週間)
奈良国立博物館ホームページ http://www.narahaku.go.jp/

■三井記念美術館(東京)

特別展「琵琶湖をめぐる近江路の神と仏 名宝展」
会期:平成24年9月8日(土)~平成24年11月25日(日)
   ※大日如来さまと、如意輪観音坐像(平安時代、重要文化財)がお出ましになります。
三井記念美術館ホームページ http://www.mitsui-museum.jp/
http://www.ishiyamadera.or.jp/news/haikan.html

 両者を比較するうえで、上下に快慶、運慶の大日如来像を掲載した(運慶像は光背のない画像も参考までに掲げてみた)。制作年代では約20年の隔たりがあるが、両者の同質性(とくに全体構成、手印、腰部衣文などの胴体表現)と異質性(とくにご尊顔の表現、もちろん宝冠、光背の有無などは前提としたうえで)は画像をみるだけで明らかであろう。

快慶 大日如来 石山寺
快慶作 大日如来坐像(1194年)

運慶展
運慶作 大日如来坐像(1176年)

(参考)
0-1.jpg
同上(光背なし)

 さて、円成寺、石山寺には共通点があるのだろうか。円成寺の歴史を紐解くと、「天平勝宝8年(756)聖武・孝謙両天皇の勅願により、鑑真和上の弟子、唐僧虚瀧(ころう)和尚の開創と円成寺(えんじょうじ)縁起に書かれている」という。一方、石山寺はその縁起で「聖武天皇の発願により、天平19年(747年)、良弁(ろうべん、東大寺開山・別当)が聖徳太子の念持仏であった如意輪観音をこの地に祀ったのがはじまり」とされている。このように両寺縁起においては、ほぼ同じ時期に建立されたことがわかる。このあたりの<符号>もなかなか面白いが、ともに真言宗の名刹であり、大日如来のもつ意味は限りなく重要である。

http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-261.html
(「大日如来のもつ意味」を参照)

 ところで快慶の大日如来をじっと観察していて思ったのは運慶円成寺像との近接性より、慶派一門の実慶作のそれへの連想である。快慶の「銘」はあるものの、むしろ慶派一門がいかに東寺系などの寺院と密接な関係をたもち、また大日如来は、「カタログ」上位の主要な作品(製品)であったのではないかという、いささか下世話な想像を馳せた。それも次の2つのパンフの同アングルからの画像でご確認いただきたい。

快慶 大日如来 石山寺2

20111220-2.jpg

http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-280.html 

快慶の大日如来像はなかなかに興味深いけれど、快慶作を多く見てきた直観では、本像は快慶のほんとうの凄さを示す作品ではないと感じた。運慶の大日如来の諸作にくらべれば訴求力は乏しい。その一方、運慶、快慶、実慶ら慶派工房の大日如来の「共通マニュアル」的な均一性を感じさせる出来ばえは強調しておいてもいいかも知れない。この一派の結束の強さを示す作品であるといいうるだろう。たとえば本展での快慶派の仏師栄快の地蔵菩薩立像などもその典型である。

近江路の神と仏3
(長命寺地蔵菩薩立像 栄快作)

西教寺 薬師(特殊印)
(西教寺薬師如来坐像)

 さらに慶派に関係のありそうなのが西教寺の薬師如来坐像である。小振りで緻密な作風の落ち着きある逸品であるが、特殊な印相を結ぶ。これも慶派一門の手になるものではないかとの想像がはたらく。

http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-282.html

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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