大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

MIHO美術館 ガンダーラ仏

1ガンダーラmiho
http://miho.jp/japanese/index.htm

 時がたつのは早いもので、MIHO美術館をO氏ご夫妻に案内してもらって5年がすぎた。そのときは蟹満寺について書いた。

http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-59.html

 MIHO美術館のことを思い出す。ここの舶載彫刻の展示は圧倒的だ。
 「はじめ」が究極とでもいうべきか、ガンダーラ仏の秀でた造形力は、2~3世紀の仏像の「始原」がいわば完成にちかいイメージをもっていることを示す。われわれがガンダーラ仏に接したときの言い知れぬ感嘆の背後には、そういった思考が瞬時に想起され、かつそれに困惑するからではないだろうか。
 もちろん、そのお顔は、よく指摘されるとおり、古代からのギリシア彫刻を連想させ西欧人を彷彿とさせる。モンゴロイドのわれわれの同朋とは異質なエキゾチズムがそこにある。螺髪など部分的にも異なる点はあるが、にもかかわらず総じて仏像の仏像たる存在感は、まさにガンダーラ仏に発して今日にいたっている。全体への着想力、瞑想の姿の神々しさ、印相の表現力、古拙の微笑のもつ意味など謎とともに、強い説得力があるからこそ、われわれはガンダーラ仏に惹きつけられると思う。


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仏立像 パキスタン ガンダーラ 2世紀後半期 片石 H-250

【以下は全て引用】

 総高250センチメートル。ガンダーラ美術の作り上げた最も大きな仏像と言われる、パキスタン-ペシャワール博物館の仏陀立像(頭光の上まで263センチメートル)に比肩するものと言えるでしょう。ガンダーラは歴史的に民族、王朝の激しく交替してきた地域です。千七百年以上遡る古代、彼の地がクシャーン朝インドとササン朝ペルシャとの抗争の狭間で小国に引き裂かれて行った頃、この大きな仏像はそれだけ多くの人々の救いを祈願して造られたものではないかと思わずにはいられません。
うつ向いたそのまなざしの懐に入る時、何とも言えぬ優しく静謐な雰囲気に包まれるのを覚えます。
このうつ向いていると言うことはこの像が本来高い位置に祀られていた事の証拠であると思われます。礼拝者はこの像の下からその慈愛に満ちたお顔を拝したことでしょう。そのお顔、そのまなざしは他ならぬ礼拝者に注がれています。
同時代の寺院内部を装飾した小さな仏伝(釈迦の生涯の物語)浮彫には、民衆の中で遊行する釈迦が描かれています。そのお顔、まなざしは拝跪するものの顔、まなざしに合わせうつ向けられています。その体勢そのものが拝跪するものに注がれているのです。
大きさこそ違え、これはこの大像とそれを実際に拝する者との関係に他なりませんその許に拝跪する者は全て喜び迎えられるそんな大変慈愛に満ちた聖堂の主であられたのでしょうか。
釈迦がさとりをひらかれ仏陀となられた時、これは他人に話しても誰もわかってくれる人はいないだろう、このまま黙っていようと思われました。
世界の主-梵天はこのままでは世界が滅びると嘆き、釈迦如来の前に現われ跪き拝してこの真理を人々に説くよう三度懇願しました。
そこで釈迦は生きとし生ける者への深い哀れみの心から説法に立ち上がられたのです。この像の左足は僅かに前方に出ています。
直立不動ではなく正に人々を救うために歩むその姿を彷彿とさせるものがあります。この救われるべき拝跪する者に対し全身を注ぎ込む釈迦如来、そのお顔は大変慈しみに満ちています。

ガンダーラM7

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仏頭 ハッダ/タキシラ 4-5世紀 ストゥッコに彩色 H-26.5 W-17.6

 この仏頭はおそらく等身大以上の像だったと思われる。彩色されたあとと、全体に朱線が残っていが、唇の朱彩は非常に鮮やかなので、当時のものではないであろう。形式的な頭髪から考えると、この像は型を用いて作られたものであろう。右耳は別に作って接着し、左耳は失われた痕が残っている。ハッダやタキシラのストウッコ彫刻は、固定した木材に縄を巻いたものを芯にして、植物繊維を混ぜた粘土を盛り上げて全体の形を作り、きめの細かい土で表面を整えていく。さらに面部は上質の白土で仕上げて彩色を施した。粘土を盛り上げるため、目、鼻、口などの細部を簡単に成形出来、柔らかい素材の肌合いが肉体や布の質感を表すのに適していた。顔や腕や胴といった部分毎に型を用いる事も多く、変化に富むポーズの像を大量生産する事が出来た。この製法は中国や日本の塑造彫刻と基本的に一致している。

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転法輪印仏坐像 産地 ハッダ/タキシラ 時代 4-5世紀 素材 ストゥッコに着色 寸法 H-78

 ガンダーラ美術の後期に栄えたストウッコ(塑造彫刻)の典型的な例であるこの作品は結跏趺坐し、両手の親指と人差し指の先端を合わせて輪を作り、他の指を軽く曲げて甲を見せ、右手を上に左手を下にして腹前に構えている。この印相は転法輪印と呼ばれ説法を意味し、座像のみに限られる。波打つような長髪を頭上で束ねて肉けいとし、まとった大衣の深く浅く様々に刻まれた点は、とても自然な表現になっている。頭髪や衣の部分に比べて面相部の土は粒子が柔らかく、上質の白土で仕上げられている。白ごうは刻まず、朱線の小さな円で示され、瞳にも淡い墨の彩色がしてある。その他にも随所に朱が残っているが、この彩色が当初のものかは確認できない。部分的に頭髪には灰色、衣は淡緑色を帯びている事も分かる。

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燃燈仏授記図浮彫 産地 ガンダーラ地方 時代 3-5世紀 世紀 3-5c 素材 片岩 寸法 H-69.3

 釈迦菩薩(前世の釈迦)がバラモンの青年修行者メーガであった時,燃燈仏から来世において悟りを開き釈迦仏となるであろうとの授記(予言)を与えられた説話を表現している。燃燈の原語はディーパンカラ(Dipankara)で,定光,錠光などとも漢訳される。この説話は一般に燃燈仏本生と呼ばれるが,本来の本生話(釈迦の前世の物語)には含まれず,むしろ釈迦の生涯の物語である仏伝の冒頭に位置する性格をもっている。

 ある日,都に燃燈仏が現れることを知ったメーガは是非燃燈仏に会って花を捧げたいと思い立つ。しかし,町の花はすでに国王によって集められていた。その時,彼は脇に水瓶を抱え7本の蓮華を持つゴーピーという少女に出会う。彼女はなかなか花を譲ってくれないが,メーガは懇願の末に有金すべてを投じてようやく5本の蓮華を得た。国王その他の人々が燃燈仏に散華するが,メーガが捧げた5本の蓮華のみが空中にとどまり燃燈仏の頭光を飾った。更にメーガは,燃燈仏の足が泥水で汚れないように,着ていた衣を地面に広げ,その上に自らの髪を解いて平伏した。燃燈仏はメーガに対し,来世に仏陀となるであろうとの予言を授けた。メーガは喜びのあまり躍昇した。

 燃燈仏による釈迦菩薩への授記を記す経典は多数あり,それぞれ物語の内容に多少の違いがあるが,その骨子はほぼ共通している。*1 すなわち,購華,散華,布髪,空中躍昇の4点である。空中躍昇の記述はないものもある。本作品では,向かって右下に購華,左に散華,その下に布髪,更に上方に空中躍昇の諸場面を配している。右上に浮かぶ人物は,手に金剛杵を持っているので,帝釈天と考えられる。

 燃燈仏授記本生図の作例には幾つかの形式が見られるが,叙述的性格の強いものと,燃燈仏が他より明らかに大きく表され,その尊像的性格が強められたものとに大別できる。*2 本作品は後者に属する。特にカーブル博物館蔵のショトラク出土の作品(no.64-7-13)に酷似している。本作品の左右相称の構図,正面向きの動きの少ない姿勢,丸い顔,ずんぐりとして均衡を欠く体躯,紐を貼り付けたような形式化した襞の表現などは,アフガニスタンのカーピシー地方のショトラクやパイターヴァーの遺跡から出土する作品の特色である。また仏陀の両肩の火炎も,この地方で好まれた図像である。

1 安田治樹/ガンダーラの燃燈仏授記本生図/仏教藝術157号
2 注1前掲書

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禅定印仏坐像 産地 パキスタン ガンダーラ 時代 2-3世紀 素材 片岩 寸法 H-68 D-23 W-53.4

 無装飾の円形の頭光と、波打つような長髪を紐で結って肉けいとし、眉間に小さな突起を刻んで白ごうとしている。口髭をたくわえた面貌は落ちつきがあり、目を半ば閉じて深く内面を見つめている。均衡のとれた体躯に大衣をまとい、両足を隠している。台座正面は両端がアカンサス柱頭で、その間には11体の像を刻んでいる。中央に樹下に菩薩が禅定印を結んで結跏趺坐し、その両脇対称に右手で施無畏印を結び左手を垂下する仏立像、右手を垂下し左手は肩口に挙げて衣端を握る仏立像、右手を肩口に挙げ甲を見せ垂下した左手に水瓶を執る菩薩立像、右手を胸前に構え左手は肩口に挙げて衣端を握る仏立像、合掌する供養者立像であることが分かる。これら9体の像は弥勒菩薩の左右に仏陀が立つ3組の三尊像と見ることが出来、どの様な思想背景があるか興味深いが、このような例は他にないため、意味は未だ不明である。

http://www.miho.or.jp/japanese/index.htm

(参考)
http://daishinji.net/essay/gandhara.shtml
ガンダーラ仏 ギャラリー

ガンダーラM3

ガンダーラM9

ガンダーラM6

ガンダーラM8

ガンダーラM4

ガンダーラM5

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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