大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

浄楽寺へ行く

浄楽寺4

【以下は引用】
 横須賀市芦名の浄楽寺で3日、いずれも鎌倉時代の仏師・運慶作で国指定重要文化財の阿弥陀(あみだ)三尊像、不動明王立像、毘沙門天立像が開帳された。関東では数少ない運慶の傑作が間近で見られるとあって、大勢の拝観者でにぎわった。
 浄楽寺は鎌倉幕府の有力御家人・和田義盛が建立したと伝えられる。義盛は奥州合戦での戦勝祈願とともに北条時政への対抗心から、木造の阿弥陀三尊像などを造らせたとみられる。同寺では、毎年3月3日と10月19日の2回、本堂裏手の収蔵庫に安置するこれらの仏像を開帳している。(2013年3月4日 神奈川新聞)
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1303040003/
 

 今年も上記とまったく同じ風景。そこに小生もいた。残雪がまだ少しあって、昨夜からの小雨がやんだ直後だった。堂宇内はひとしお寒かった。午前10:30頃に入館したが、善男善女が次々に狭い空間に押しかけてくる。されど、床板からの冷気厳しく、人いきれで暖をとれる・・・とまではいかない。以前もお目にかかっている仏さまばかりながら、こちらの心構えが反映し、やはり足を運んで拝顔すると有り難味がます気がする。

【阿弥陀三尊】
浄楽寺1

運慶展 (11)

浄楽寺 運慶 阿弥陀4

浄楽寺 運慶 阿弥陀3

浄楽寺 運慶 阿弥陀

浄楽寺 運慶 阿弥陀2

0-20.jpg
【毘沙門天】
運慶展 (2)
【不動明王】
浄楽寺3

  寒いなか地元ボランティアの方の丁寧な解説があった。面白かったのは、願成就院諸像が国宝に指定されたのに、浄楽寺の彫刻群は重文のまま据え置かれたことについてのコメント。荒ぶる(独創性の高い)願成就院諸像に対して、大人しい(平安様式も残す)浄楽寺諸像のちがいではないか・・・といった見立てであった。後補のやり方、程度の違いもあるだろうと思う。
 
 浄楽寺阿弥陀如来については、興福寺北円堂本尊(弥勒如来坐像)のほうに、むしろ近接性があるように感じた。写真の右指をご覧いただきたいが、印相が同じである。西村公朝氏は、「品」は信仰の深さを、「生」はどれだけ善行をしたかを表すとし、願成就院像が武士向けの「中品中生」印であることを解説しておられる(西村公朝 熊田由美子『運慶 仏像彫刻の革命』新潮社 1997年 pp.37-38)。運慶は造像にあたって印相による表現の違いを意識していたという重要な指摘である。とすれば、浄楽寺像、興福寺像の表現にそれが投影されていてもおかしくはない(下記の画も参照)。

 また、「やや大人しい作風」といった点も曲者である。そもそも像内納入の銘札がはやくから知られていながら、浄楽寺像は日本美術史の専門家からは、ながらく運慶の真作とは認められてこなかった。有名な久野健氏のX線撮影によって、願成就院像が運慶作と認められ、であれば浄楽寺像も・・・といった不名誉な連鎖的な「認定」であったことは忘れてはならない。それくらい様式史は危ういものなのに、いまだその呪縛からまったく開放されていないように思う。

 運慶、晩年の最高傑作と日本美術史の専門家が絶賛する北円堂弥勒如来坐像は本当に完成された様式なのか?たとえば、初期の大日如来坐像と比較して、ここには形式化による「大人しさ」は微塵もないと誰がいえるのだろうか?
 むしろ、ミステリー風にいえば、動機、アリバイ、本星と3つの要素をみれば、「動機」はあくまでも施主の意向を踏まえたもの、「アリバイ」は製作日数の長短、そして「本星」は、どの程度、運慶自身が関与したのかにあるように思う。浄楽寺像も運慶他弟子など10名が造像に参加、弥勒如来坐像では運慶工房はすでに隆々と巨大化しており、どの程度、運慶自身の鑿(ノミ)が入っているかは不詳。

 さらに言えば、「アリバイ」でも運慶工房は一度に多くの仕事をかかえており、運慶自身の関与度合いも異なり、その出来ばえには差があったとしてもなんら不思議はない。しかし、われわれが現在、拝顔できるのはあくまでも現存作であり、厖大な作品群のごく一部にすぎないことを忘れてはならない。相対的だか、秀作も凡作もならべて、年代順に様式史を緻密化しても意味はない(場合もある)。
 虚心にみれば、浄楽寺阿弥陀如来は立派な作品であり、無理な様式論で優劣は論じてはならないと考える。ながらくご尊顔を拝していてほかに考えることもあったが後日に・・・。


(参考)運慶、快慶など国宝指定
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-354.html

【興福寺北円堂本尊】
運慶北円堂2

運慶北円堂3

運慶北円堂4

運慶北円堂6

運慶北円堂7

【良く比較される願成就院像】
運慶展 (10)

運慶展 (9)

阿弥陀三印相

【運慶、快慶、慶派】インデックスとして
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-282.html

(参考)【特別展】運慶 中世密教と鎌倉幕府 神奈川県立金沢文庫80年
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-212.html
(参考)運慶ブーム
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-210.html
(参考)運慶ブーム2
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-211.html
(参考)参考文献リスト 4  鎌倉時代の彫刻
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-category-4.html

なお、各像の概要については以下も参照
http://kanagawabunnkaken.web.fc2.com/index.files/raisan/shodana/shodana49.htm

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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