大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

渡来人の系譜 4  行基について

大阪市美術館3

千田稔『天平の僧行基 異能僧をめぐる土地と人々』(中公新書 1994年)を読む。労作であり非常に勉強になる。まず、副題の「異能僧」という言葉に惹かれた。
自らが勝手に命名した「異界の7人」という人脈がある。1人目は役行者こと役小角、2人目は当時のスーパー国際人吉備真備、3人目は沙弥・空海、4人目は陰陽師こと安部晴明、5人目は悲劇の武将・平将門、6人目は江戸の科学者・平賀源内、7人目は特定の人ではなく風水師という「異界案内人」である。


(参考)7人の異界人列伝(役小角~帝都物語まで) - Amazon.co.jp

「異界の7人」には入れていないけれど、行基については、かねてから関心がある。仏像や社寺が好きなら、どこに行っても行基菩薩の伝承は、聖徳太子、弘法大師空海と同じくらい数多くある。
しかも特定の寺院を離れた一介の私度僧は、その後破戒僧として国家から弾圧されながらも社会活動を継続し、遂には天皇が自ら要請することによって、国家最大の事業、大仏建立のために働き大僧正にまで登りつめるという非常にドラマティックな履歴をもっている。

本ブログでも聖徳太子と空海については多く記してきた。行基(668~749年)は、聖徳太子(574~622年)と空海(774~835年)のちょうど中間に位置している。聖徳太子没後約半世紀をへて行基が生誕し、行基寂滅後約四半世紀をへて空海が産声をあげる。
ところで単なる民衆であれば、聖徳太子について知る由もなかったかも知れないが、当時の最高の知識層であった行基は、もちろん強くその偉業を意識していたであろう。空海にいたっては、土木事業や雨乞いなどの社会活動に関して、行基はいわば背中の見える巨大なる先人であり、その足跡は驚くほど一致している。
聖徳太子も空海も、その思想は(その伝承をふくめて)文書で知ることができる。その一方、行基は高僧でありその業績は燦然たるものではあるが、書き物でその考え方を知ることはできない。それゆえに自由な空想が働く余地がある。

さて、千田稔氏の上記労作において大いに啓発されたのは、行基と渡来人・帰化人との関係についてである。行基は、和泉国大鳥郡蜂田郷(現・大阪府堺市)に【百済】系渡来人の血をうけて生まれた。近くにはこれも渡来系の土師氏の集落があり、墳墓、葬祭、道教などに通じていたようだ。
行基のルーツは、伝説の渡来人、王仁(わに)の後裔【西文】(かわちのふみ)氏から別れた高志(こし)氏にあたり、父は高志才智(さいち)、母は蜂田首虎身(はちだのおびととらみ)の娘古爾比売(こじひめ)と伝えられている。十五才で出家して薬師寺に入り、道昭に瑜伽唯識(ゆか・ゆいしき)を学び、さらに竜門寺の義渕に法相を学んだ。


http://www.k4.dion.ne.jp/~nobk/kwch/gyouki.htm

その師、道昭は法相宗の僧、河内国丹比郡【船】連(ふねのむらじ)(現・大阪府堺市)出身で父は船恵尺。白雉4年(653年)、遣唐使の一員として定恵らとともに入唐し、玄奘三蔵に師事して法相教学を学ぶ。玄奘はこの異国の学僧を大切にし、同室で暮らしながら指導をしたという。空海以前に先進国中国で薫陶をうけた秀抜なる留学僧であった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%93%E6%98%AD

行基の生涯にわたる業績で、気になるのは誰が実働部隊であったかである。すでに【ブランケット】で示したように、西文氏、船氏といった渡来人・帰化人たちが行基の社会事業(道場や寺院の建立、溜池15窪、溝と堀9筋、架橋6所、困窮者のための布施屋9所等の設立など)を陰に陽に支えてきたのではないかというのがその仮説である。

渡来人・帰化人たちは行基に必要な技能・技術を身につけていた。行基には西文の系譜からみても呪術的なカリスマ性があったであろうが、彼らにとっては希望の星であり、自らのリーダーに必死に従ったという風に考えている。

もうひとつの仮説であるが、聖武天皇は大仏建立にあたって、どうしても行基の助力を必要とした。それは、行基の盛名が必要であったのみならず、弾圧にも耐えて行基を支えてきた多様な渡来人・帰化人たちの取り込みこそが真の狙いではなかったかという想像もありうると思う。行基が興した49寺の多くが、渡来人・帰化人たちと関係が深いこともそれを物語っているのではないかと考える。


(参考)
http://www.geocities.jp/iko_kan2/gyouki-49in.html

<以下を加筆修正>
http://blog.livedoor.jp/shokkou/archives/2095582.html

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