大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

神護寺薬師如来立像

神護寺薬師如来


 学生のときに訪れてから30数余年ぶりの訪問である。険しい石段の参道はかってはまったく気にならなかったが今日はいささかを超えてシンドイ。しかし、この薬師如来を拝観するには「身体的」にと同等に必要な「心」の準備運動かもしれない。次は神護寺HPからの引用。

□ 薬師如来立像
 金堂に安置される本尊は薬師三尊である。
 鎌倉時代の末に編纂された『神護寺略記』に引用されている『弘仁資財帳』に「薬師仏像一躯 脇士菩薩像二躯」とあるのがこの三尊に当たると思われる。
 資財帳とは、定額寺で作ることを義務付けられていたもので、弘仁年間の資財帳とは当時定額寺であった神願寺のものであり、この像が神願寺から高雄山寺に移されたと考えられてきた。
 近年、この本尊を高雄山寺に由来するとする説が出され、その結論はまだ定まっていない。
 新説では、弘仁年間は資財帳の提出の義務付けが停止された時期であること、資財帳の作成は定額寺のみに限られたものでないこと、神願寺が寺域としてふさわしくない場所にあったとされる像を、あえて清らかな場所、高雄山寺の本尊に移すといった考え方は、当時の穢れに対する対処法として疑問があることが提起された。
 見据えるような鋭いまなざし、太い鼻筋と肉付きよい小鼻、思い切って突き出しへの字に引き締めた唇。拝するものに畏怖の念を起こさせるこのような異相は禁欲的な山岳修行者の存在が生み出したものかもしれない。
 唐招提寺薬師如来像とくらべて胸と腹が小さく、腰以下が強調されて圧倒的な重量感を印象付ける。木という硬くまた粘りのある材質を鋭利な刃物で彫ることによる木彫ならではの鋭い表現が生まれてきている。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kosho/treasure01.html

 多くの識者の見解は、世情定まらぬ平安初期の時代が投影された作風(その森厳さ、威圧感)とか、最先端の技術マニュアルでもあった密教芸術の影響(豊穣な、濃厚な表現ぶり)を指摘する。仁和寺霊宝館で「別尊雑記」(平安時代、重文)のオリジナルを見る。後者の見解には首肯しうる説得力があるようにも思う。

 金堂前でご住職とお話しする機会をえた。私の疑問は創建当初、神護寺にはこの薬師如来立像のような作風の多くの仏様が存在したのかどうかということだった。ご住職は慎重に言葉を選ばれて、ご本尊がほぼ創建当初の時代のものであることは確認できるにせよ、もともとどの寺院に属し、どのような経緯で今日本所にあるかは不明な点も多い。しかし、河内からの移設も可能性のひとつとのことだった。ふたたび神護寺HPからの引用。


□沿革史
平安遷都の提唱者であり、また新都市造営の推進者として知られる和気清麻呂は、天応元年(781)、国家安泰を祈願し河内に神願寺を、またほぼ同じ時期に、山城に私寺として高雄山寺を建立している。
 神願寺が実際どこにあったのか、確かな資料が残っていないため、いまだ確認されていないが、その発願は和気清麻呂がかねて宇佐八幡大紳の神託を請うた時「一切経を写し、仏像を作り、最勝王経を読誦して一伽藍を建て,万代安寧を祈願せよ」というお告げを受け,その心願を成就するためと伝えられ、寺名もそこに由来している。 また、私寺として建てられた高雄山寺は、海抜900メートル以上の愛宕五寺のひとつといわれているところからすれば、単なる和気氏の菩提寺というよりは、それまでの奈良の都市仏教に飽きたらない山岳修行を志す僧たちの道場として建てられたと考えられる。
 愛宕五寺または愛宕五坊と呼ばれる寺は白雲寺、月輪寺、日輪寺、伝法寺、高雄山寺であるが、残念ながら現在にその名をとどめているのは高雄山寺改め神護寺と月輪寺のみである。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kosho/enkaku.html

 私は目が開かれる思いだった。「では、ご本尊は南都仏師がつくった可能性もあるのですね」とご住職に問うたが、五大虚空蔵菩薩像が唐招提寺の現存仏との共通点があることを指摘され、その可能性は否定はされなかった。私は奈良博でいつも元興寺薬師如来像の前に佇みつつ、この両薬師像が同一ないし関係の深い仏所の作品ではないかと思っていた。素人にのみ許される空想の翼だろうが、その特異な肢体の凝縮感、表情に違いはあるが非常に厳しい尊顔の切れ味、なによりその抜群の技量からみて南都仏師の<意地>がここに表現されているように思われてならない。

テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

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