大和古仏探訪

京阪神を中心に内外の古仏についていろいろと書いてみたいと思います。

薬師寺展 薬師寺の魅力

薬師寺聖観音

 薬師寺にはなんども足を運んでいる。たとえば、真夏の或る日に、東院堂の聖観音菩薩立像をまえに一人座して汗をおさえつつ長視したとき、晩秋の日没ちかく、人影がまばらになった金堂で薬師三尊とともに暮れゆくしばしの時間を過ごしたとき、一人向き合って空間を共有し、こうした崇高な仏様と相対させていただいていること自体が、なんとも勿体なく、有り難いことだと感じる。
 その仏様がいま、平城遷都1300年記念「国宝 薬師寺展」 (平成館 2008年3月25日(火)~6月8日(日))で東京に「出張」しておられる。そして今日は東京でお目にかかる。
 

 「薬師寺には、日本を代表する古代彫刻として有名な国宝の金堂薬師三尊像と東院堂聖観音菩薩立像があります。ともに完成度のきわめて高い様式的頂点を示す像ですが、自然で生き生きとした身体や、質感をよく表わす薄くやわらかい衣などの表現が見事です。今回の展覧会には金堂本尊薬師如来像の両脇侍である日光・月光菩薩立像が2体そろってはじめてお出ましになることが第一のみどころです。普段、薬師寺では両菩薩像は光背があり、聖観音菩薩立像も厨子内に安置されているため、そのすばらしい側面や背面はよく見えませんが、今回はそのすべてをご覧いただけます」。
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=5129

 興福寺北圓堂の特別拝観で、背面から無着、世親像の逞しい背中をじっと見ていると、運慶一門はこの兄弟の性格の違いまでも活写しようとしたのではないか、とさえ思えてくる。背面鑑賞には新しい発見がある。
 さて、本会期中、既に50万人を超える拝観者が凝視したであろう三尊についてである。一般に聖観音像はその様式からみて時代がはやく、薬師三尊は唐の影響を色濃く受けた少しく後代の作という解説を多く読んできた身だが、今日しみじみと聖、日光、月光の観音三像を背面を含むさまざまな角度から拝観しての思いは異なる。
 この仏像群を鋳造した仏師(仏所、工房)の技倆はとてつもなく高度で、たとえば施主が、仏師自らが望めば、どの時代風でも、一部は糢糊作的にであろうと、いかようにも差配はできたのではないか。聖観音は復古調も少し加えた作風で、日光、月光はむしろ当代の作風(唐風)で・・などはいとも容易かったろう。三像はそのご尊顔(特に鼻梁)や衣紋の細かい処理でも相違点よりもはるかに共通点が多い。時代測定の規準の技術的進歩論でもどちらが上かは比較のしようがないのではないか。
 後世の人間が自分たちで勝手につくってきた様式論をあてはめ、作造時代の当て推量をすることは、この<世界最高水準のブロンズ像>に関する限り、無意味ではないか。聖観音の背面の見事に配された完璧な意匠性をみていて、なお、「正面観賞(鑑賞、観照)性」云々という昔ながらの(大家の?)解説をそこに記す神経が信じられない。<ドクサ>と言ってはお叱りをうけそうだが、われわれの見方自身に潜む臆断を拒絶するかのような見事で圧倒的な「兄弟的」三尊の立ち姿であった。

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